Nagano Tech Style Lab活動報告会
【活動レポート】
地域で育む「探究心」と「技術」:Nagano Tech Style Lab・地域クラブ活動報告会
はじめに:雪の中,熱く幕を開けた地域クラブの活動報告会
厳しい寒さと雪,そしてインフルエンザの流行という逆風を跳ね返し,会場は参加者の熱気で満ち溢れていました。本法人が推進する「学校外での学びの場」は,今,まさに子どもたちの好奇心の受け皿として力強く鼓動しています。
第1部:技術の低さを競う「ヘボコン」――失敗が主役になる魔法
第1部の主役は,技術力の「低さ」を競うロボットコンテスト,通称「ヘボコン」です。
信州大学の次世代STEAM教育プロジェクトと共催で行われていました。
当日のハイライトは,技術力の「低さ」を競い合うロボットコンテスト「ヘボコン」でした。まともに動かないことや,壊れることさえも肯定し,「失敗」を笑い飛ばす。しかし,その賑わいの本質は,単なるお祭り騒ぎではありません。
「ヘボいほど偉い」という逆転の哲学
通常のロボコンが「より速く,より正確に」を目指すのに対し,ヘボコンの哲学は真逆です。
* 「ヘボいほど偉い」
* 「失敗が主役,失敗そのものが楽しい」
* 「ヘボさを褒める文化」
会場では,思い通りに動かずバラバラになるロボットに対し,観客から「エレガントな壊れ方ですね!」という称賛の声が飛び交いました。この「不完全さを愛でる」精神こそが,参加者の心理的安全性を高め,創造性のブレーキを外しているのです。
この熱意を象徴するのが,松本市から朝6時台の電車に揺られてやってきた高校2年生の大塚さんです。わざわざ遠方から,ただ「ヘボさ」を追求するために駆けつける。この情熱こそが,ヘボコンという文化の深さを示しています。
ハイライト:知略(?)とガムテープの攻防
登場したマシンたちは,どれも制作者の「性格」が滲み出る傑作ばかりでした。

* 「ラップ号」: サランラップの芯を構造材にするという,身近な廃材の極致。

* 「N728」: 焼きのりの箱をボディに,名前の響きを「ノリノリ」とかけたミサイル風ロボ。

* 「スーパーギャンブル号」: 注目は,相手を惑わすためのルーレットと**「チンチロリン(サイコロ)」を搭載した番外戦術。技術ではなく「運」で勝とうとする姿勢に会場は沸きました。

【結果発表】 トーナメントを制し,実力(運?)で優勝したのは焼きのり箱の「N728」。しかし,この大会で最も栄誉ある「ヘボコン大賞」を受賞したのは,「コードリール(マーク3)」でした。

3回目の出場となるこのマシンは,まさに「2歩進んで3歩下がる?」というヘボコン哲学の体現者。勝負には負けても,最後までその不完全な輝きを放ち続けた姿が,審査員の心を掴みました。
大会の様子は以下から
第2部:地域クラブ成果発表会――「本物」と「探究」が交差する
第2部では,長野の地で芽吹いている「地域クラブ」の活動が報告されました。ここではヘボコンの遊び心とは対照的に,技術への真摯な向き合い方が光りました。
技術地域クラブ:先輩の意志を継ぎ,進化し続けるロボット製作
現在,市内4校の生徒たちが集まる「技術地域クラブ」では,11月からの短期間で,驚くべき技術的探究と対話が生まれています。

* 「居場所」を自ら作る基礎力: 活動の皮切りとなったのは,プラスチックダンボール(プラダン)を用いた収納ボックス製作です。単なる箱作りではなく,設計図から自作し,正確な切り出しと組み立てを実践。自分たちのロボットや工具を収める「基地」を自ら作ることで,物づくりの基礎を身体で覚えました。
* 継承から生まれる改良の視点: 彼らは「3年生の先輩が大会で使ったロボット」を分解・分析するという,エンジニアリングの本質的なプロセスに挑んでいます。
3Dプリンターで作られたパーツや,複雑なギアボックスを見つめ,「重りの位置が悪く,バランスが不安定だ」といった課題を自ら発見。先輩への敬意を払いつつも,自分たちの手で大胆に改造を施す姿には,技術継承の新しい形が見て取れます。
* 「真面目」と「ヘボさ」が交差する交流: 柳町中学校の生徒さんは,製作中の「雑談」が何よりのモチベーションだと語ります。彼が製作したロボットは,真面目に高性能を目指したはずが,結果として「ヘボコン的な愛くるしい動き」になってしまったと言います。
意図した通りにいかない「失敗」を仲間と共有し,笑い合える環境が,技術へのハードルを下げ,豊かな発想を支えています。

アート&デザインクラブ「MIRART」:感性を解き放つ自由な居場所
岡学園トータルデザインアカデミーが運営する「ミラート(未来×アート)」は,学校ごとの個性を活かした運営が特徴です。

* 西部中学校(自由・交流重視): 小学生も1名参加するこの場では,コミュニケーションを最優先。カリキュラムに縛られず,自分の好きなものを描くスタイルです。講師は個別に寄り添い,色鉛筆のグラデーションの付け方など,一人ひとりの「表現したい」をサポートしています。
* 川中島中学校(スキル・カリキュラム重視): 一方でこちらは,「上達」への意欲が高い生徒たちのために具体的な技法を学びます。先生や生徒が自らポーズを取る「ジェスチャードローイング」を導入し,観察眼と描写力を磨いています。
* デジタルへの壁と期待: 活動を通じて,生徒たちのデジタルイラストへの強い関心が浮き彫りになりました。しかし,学校内のWi-Fi環境の制限により,当初予定していたデジタル制作がスムーズに進まないという課題も。「描きたい」という情熱を止めないための,インフラ整備という次なる目標も見えてきました。

エコマラソン長野:木製マシンで国際サーキットを駆ける
法人理事でもあり,エコマラソンの事務局代表の箕田氏が率いる「エコマラソン長野」は,25年にわたり「本物」に触れる機会を子供たちに提供してきました。

* 究極のエンジニアリング: マシンは驚くほど独創的です。地元の職人と連携した「木製シャーシ」は,単なる代用品ではなく,役目を終えれば「ウッドチップ」として再利用可能なエコ素材。さらに,市販品を使わず自分たちで「手巻き」したモーターや,乾電池40本のみで走るEVなど,身近な素材を極限の技術で磨き上げています。
* 雨の鈴鹿で見せた底力: 彼らは鈴鹿やもてぎといった国際サーキットで大人たちと同じ土俵に立ちます。激しい雨の中,中学生ドライバーが45分間にわたって集中力を切らさず走り抜き,JHS(中学校)クラスで優勝を果たしたエピソードは,この活動が単なる趣味を超えた「不屈の精神」を育てている証です。
* 未来へのロードマップ: 現在はサーキットを走るマシンですが,令和8年・9年には「公道を走れる木製モビリティ」の製品化を計画しています。自分たちが作った車にナンバープレートを付け,街を走る。そんな壮大な夢が,着実に図面へと落とし込まれています。

報告に続き行われたのが,当日会場に持ち込まれたEVの実機への試乗体験です。
実機を前に,実機の説明とともに,何人かのクラブ員たちが機体に体験しました。想定以上に狭い機体,さらに詰め込まれた機能に,驚きの声が上がっていました。


おわりに:未来は「面白い」から始まる
代表の村松氏が語るビジョンは,従来の教育観を鮮やかにアップデートするものです。これからのAI時代,私たちが子供たちに提供すべきは「正解」ではなく「問いに挑む力」です。
「Nagano Tech Style Lab」は,大学,高専,専門学校,そして地域企業がそれぞれの強みを持ち寄り,子供たちの「やってみたい」を多角的に支えるエコシステムです。この火を絶やさないため,賛助会員制度などの支援体制も整えられています。

